小さな数学の研究ノート2026.09.06 · NOTE 02

Probability · Optimal Transport

分布の形が見えなくても、最適な「真ん中」は決められる。

値の範囲、平均、分散。この三つだけが分かるとき、あり得るすべての分布を、できるだけ近くから代表する分布は何だろう。

解析的証明を収録 · 学術的新規性は未確定
最適な代表から、最も遠い分布までの距離
R² = v log(M/v)2 + log(M/v)
最適な代表 C同じ平均・分散の二点分布
0.000.000.250.250.500.500.750.751.001.00値 x下からの割合 u
平均 μ=0.5、分散 v=0.125 の分位関数。
M=μ(1−μ) は可能な最大分散。log は自然対数。

01 / THE QUESTION

「平均が同じ」でも、形は違う。

平均0.5、分散0.125。これだけでは、値が二つの点に集まるのか、三つに分かれるのか、連続的に広がるのかは決まらない。

そこで、条件に合う分布をすべて候補として残す。そのどれが真の分布でも、代表とのずれが大きくなりすぎないようにしたい。これは、たくさんの点を一つの最小の円に収める問題を、分布の空間で考えることにあたる。

あり得る形を集める

値は0〜1。平均 μ と分散 v が指定された、すべての確率分布を対象にする。

いちばん大きいずれを見る

代表 Q を一つ選び、条件を満たす分布の中で、Q から最も遠いものまでの距離を測る。

そのずれを最小にする

最悪の場合の距離を、最も小さくする Q が最適中心 C。その距離が半径 R。

ずれは「質量を運ぶ距離」で測る。

ここで使うのは Wasserstein-2 距離、略して W₂。一方の分布をもう一方へ移すとき、各部分の移動距離を二乗し、確率で重みをつけて足す。その最小値の平方根が距離になる。

一次元なら計算はすっきりする。小さい順に並べて、同じ順位どうしを対応させるのが最適だ。

W₂(P,Q)² = ∫₀¹ |fₚ(u) − fQ(u)|² du

分位関数 fₚ(u) は「下から u の割合まで来たときの値」。二つの分位曲線の縦の差を二乗して積分する。曲線の間の面積そのものではない。

距離だけを理解する簡単な例

PQ0.20.80.30.60.1 移動0.2 移動
W₂ = √(½ × 0.1² + ½ × 0.2²) ≈ 0.1581
各点の確率は½。この説明用の P と Q に、同じ平均・分散は課していない。
代表の分散は、入力と同じでなくてよい。

同じ平均・分散を要求するのは、あり得る入力分布の側。代表 Q は有限の二次モーメントを持つ任意の分布から選ぶ。この違いが答えを左右する。

02 / EXPLORE THE ANSWER

最適な形を、動かしてみる。

平均と分散を変えると、最適中心も変わる。分散は、その平均で可能な最大値 M=μ(1−μ) に対する割合 s で指定する。初期値は μ=0.5、s=0.5、つまり v=0.125。

0.050.95
0:一点に決まる1:両端点に決まる
入力の分散 v0.125000
最適な最悪誤差 R0.179365
中心の分散 κv0.092828
縮小係数 κ0.742626

最適中心と、そこから最も遠い入力

最適中心 C最遠の入力 P
0.000.000.250.250.500.500.750.751.001.00値 x下からの割合 u
最遠入力の例
分位図の水平な部分は点に集中する確率、中央の増加部分は連続成分です。点線の縦の跳びの間には、中心の確率はありません。

分散が変わると、最適半径はどうなる?

現在の平均 μ での解析式現在の分散
0.000.000.050.250.100.500.150.750.201.00最悪の W₂ 誤差 R分散 / 最大分散 s
分散が0でも最大値でも、入力は一つに決まり、半径は0になる。厳密な分散が違う族どうしは包含関係にないため、半径は単調には変わらない。
スライダーに対応する最適中心の点質量と連続部分
中心の構成値・区間確率
左の点の確率0.128733.33%
連続部分の確率0.4072 〜 0.592833.33%
右の点の確率0.871333.33%

帯の幅は確率を表す。連続部分の密度は一様ではない。非対称な平均では、その区間が平均を含まないこともある。表示は小数を丸めている。

初期値では、両側の点と中央の連続部分に、それぞれ⅓ずつ。

約0.128687と0.871313に各⅓、残り⅓は約0.407172〜0.592828に広がる。最適な代表は、単なる二点分布にはならない。

03 / THE RESULT

最適中心と半径は、明示できる。

以下は 0<μ<1、0<v<M=μ(1−μ) の場合。δx は値 x に確率1を置く分布、𝒫₂(ℝ) は有限二次モーメントを持つ実数上の分布全体を表す。

定理 A / 全分布族の最小包含球

𝒦μ,v = { P : supp(P) ⊂ [0,1], EₚX = μ, Varₚ(X) = v }
M = μ(1−μ), L = log(M/v), κ = 22+L

この族をすべて含む W₂ 球のうち、半径が最小のものは中心 C が一意であり、

R² = v log(M/v)2 + log(M/v)
infQ∈𝒫₂(ℝ) supP∈𝒦μ,v W₂(P,Q)² = R² = v(1−κ)

その分位関数は、ほとんど至る所で次の式に等しい。

fC(u) = μ − κH′(u)
H(u) = min { μu, (1−μ)(1−u), vu(1−u) }

C の支持は [0,1] に含まれ、平均は μ、分散は κv。入力より小さい分散を持つ。上の最適化では、Q に支持・平均・分散の制約を追加していない。

v = 0唯一の入力は δμ。中心も同じで、半径0。
v = M唯一の入力は (1−μ)δ₀+μδ₁。中心も同じで、半径0。
μ = 0, 1可能な分散は0だけ。対応する一点分布に決まる。
中心を計算・生成するための式

切点 a,b を次で定める。

a = vμ²+v , b = (1−μ)²(1−μ)²+v , 0<a<1−μ<b<1

分位関数は、0<u<a で (1−κ)μ、b<u<1 で μ+κ(1−μ)。中央では、

fC(u) = μ + κ√v (2u−1)2√[u(1−u)] (a<u<b)

U を (0,1) の一様乱数とすれば、fC(U) が C に従う。切点ちょうどの値の選び方は分布を変えない。

通常の分布としては、x=(1−κ)μ に確率 a、x=μ+κ(1−μ) に確率 1−b を置く。残り b−a は次の区間と密度を持つ。

xL = μ + κ(v−μ²) , xR = μ + κ((1−μ)²−v)2(1−μ)
ρC(x) = κ²v2[(x−μ)²+κ²v]32 (xL<x<xR)

この密度は連続部分だけのもので、その積分は b−a。常に x<xL<xR<x となり、原子と連続部分の間には空隙がある。

では、いちばん遠いのはどんな分布?

定理 B。0<v<M において、条件を満たす入力 P が W₂(P,C)=R となることは、次のどちらかに属することと同値。これが、球面に到達する入力の完全分類である。

FAMILY 1

同じ平均・分散の、全二点分布

½½0.1464470.853553

両端点0と1を使う必要はない。図は μ=0.5、v=0.125 の一例。

FAMILY 2

0・一つの内点・1に支持を持つ分布

¼½¼00.51

固定した平均・分散に合うものが対象。図の三点分布も、左の例と同じ最悪誤差を達成する。

二つの族は、端の確率が0になる二点分布で重複する。「高々三点の最悪例が一つ存在する」という主張に加えて、等号になる入力をすべて特定するのがここでの内容だ。

二つの最遠分布族をパラメータで書く

二点族 Pp は p∈[a,b] を使って次のように書ける。δ の添字は、その点の値を表す。

Pp = p δμ−√[v(1−p)/p] + (1−p) δμ+√[vp/(1−p)] , a≤p≤b

三点族は P=p₀δ₀+pcδc+p₁δ₁ として、

p₀ = 1−μ−D/c, pc = D/[c(1−c)], p₁ = μ−D/(1−c)
D1−μ ≤ c ≤ 1 − Dμ , D=M−v

この c の閉区間で質量はすべて非負になる。区間の内点では三点、端では二点に退化する。

04 / WHY IT WORKS

すべてを収めて、それ以上は縮めない。

証明は二つの向きから進める。まず候補の球に全入力が入ることを示す。次に、どこへ中心を動かしても同じ半径より小さくできないことを示す。前半だけでは最適性は証明できない。

上から押さえる分位関数を積分すると、支持と分散による三つの上界ができる。
下から押し返す二点分布を特別な重みで並べると、その分位重心が候補中心になる。
等号をたどる上界で捨てた非負項を残すと、最遠の分布の形まで分かる。

全入力に共通する「積分分位」の上界 H

0.000.000.070.250.140.500.200.750.271.00積分分位 K(u)下からの割合 u
三つの上界の最小値 H支持・分散からの上界二点入力の Kq の例
μ=0.5、v=0.125。Kq は平均を引いた分位関数の負の積分。各入力の Kq は H を超えない。三つの点線のうち左右の直線は、表示域の外へ続く。

以下に解析的証明を収録。長い数式は横にスクロールできる。内積とノルムは L₂(0,1) のものを使う。

証明 1 — 候補の球に全入力が入る

P∈𝒦μ,v について、平均を引いた分位関数 q を考える。q は非減少で、

q = fₚ−μ, −μ≤q≤1−μ, ∫₀¹q=0, ∫₀¹q²=v
Kq(u) = −∫₀ᵘ q(s) ds, Kq(0)=Kq(1)=0

支持の下限・上限から Kq(u)≤μu、Kq(u)≤(1−μ)(1−u)。さらに平均0と Cauchy–Schwarz 不等式から、

Kq(u) = ⟨q, u−𝟙(0,u)⟩ ≤ √[vu(1−u)]

したがって Kq≤H。H は [0,a] で μu、[a,b] で √[vu(1−u)]、[b,1] で (1−μ)(1−u) に一致する凹関数である。z=−κH′ は非減少、積分は0、値は −κμ から κ(1−μ) の間にある。よって μ+z は [0,1] 上の確率分布の分位関数になる。

q は有界な単調関数なので、その分布微分 dq は有限の非負 Stieltjes 測度。部分積分を使うと、端点で Kq=H=0 であることから、

v = ∫ Kq dq ≤ ∫ H dq = ⟨−H′,q⟩

ここで dq に関する積分は (0,1) 上。したがって ⟨z,q⟩≥κv。一方、H の三区間を積分すると、

∫₀¹(H′)² = μ²a + (1−μ)²(1−b) + v4 ∫ₐᵇ [1/u + 1/(1−u) − 4] du
= v + v4 [log(u/(1−u))]ₐᵇ = v(1+L/2) = v/κ

最後に logit(b)−logit(a)=2L を用いた。これで ‖z‖²=κv となるので、

W₂(P,C)² = ‖q−z‖² ≤ v + κv − 2κv = R²

すべての入力は、中心 C、半径 R の球に入る。

証明 2 — 下界を一致させ、中心の一意性を示す

上で定めた二点族 Pp、a≤p≤b を使う。平均を引いた分位関数 qp は、u<p で −√[v(1−p)/p]、u>p で √[vp/(1−p)]。p∈[a,b] は二つの支持点が [0,1] に入るための必要十分条件である。

パラメータ p に、次の重みを置く。

ν(dp) = κ2δₐ(dp) + κ2δb(dp) + κ4p(1−p)𝟙(a,b)(p) dp

この測度の総質量は1である。

ν([a,b]) = κ + (κ/4)[log(p/(1−p))]ₐᵇ = κ(1+L/2) = 1

この重みで分位関数を平均すると、ちょうど z になる。

∫[a,b] qp(u) ν(dp) = z(u) = −κH′(u)

重心恒等式の確認

qp の u=p における跳躍量は √v/√[p(1−p)]。ν の連続密度を掛ければ、(a,b) 内で平均関数の分布微分の密度は、

z′(u) = κ√v4[u(1−u)]32 (a<u<b)

となり、z の微分と一致する。a,b の原子も、それぞれ次の跳躍量を与える。

z(a+)−z(a−) = κ(μ²+v) , z(b+)−z(b−) = κ((1−μ)²+v)2(1−μ)

両関数は外側で一定、両方とも u についての積分が0なので、加法定数も一致する。これで重心恒等式が従う。分位の跳躍点ちょうどの値は Lebesgue 積分に影響しない。

任意の代表 Q に対する下界

r=fQ−μ とおく。Q の平均が μ でなくても、平方を展開すれば、

∫ W₂(Pp,Q)² ν(dp) = v + ‖r‖² − 2⟨z,r⟩
= v − ‖z‖² + ‖r−z‖² = R² + W₂(Q,C)²

最大誤差は平均誤差以上だから、

supP∈𝒦μ,v W₂(P,Q)² ≥ R² + W₂(Q,C)²

よって最小半径の二乗は R² 以上。証明1の上界と一致し、定理 A が成立する。最小値を達成するには W₂(Q,C)=0 が必要なので、中心は一意である。

ここで平均しているのは分位関数。分布を通常の意味で混ぜた混合分布ではない。また、下界には二点入力しか使っていないため、二点入力族だけでも、全入力族と同じ最小包含球を決めることが分かる。

証明 3 — 最遠入力をすべて分類する

証明1で捨てた項を残せば、厳密な恒等式になる。

R² − W₂(P,C)² = 2κ ∫(0,1) (H−Kq) dq

H−Kq≥0、dq≥0 なので、等号は dq が H=Kq の点にだけ載ることと同値。

必要性

もし一つでも 0<u<1 で Kq(u)=√[vu(1−u)] なら、Cauchy–Schwarz の等号条件から q は u−𝟙(0,u) に比例する。したがって P は二点分布。

以下、P は二点分布でないとする。このとき平方根の上界は全 0<u<1 で厳しい。特に [a,b] では H−Kq>0 だから、dq([a,b])=0。中央区間で q は一定になる。

π₀=P{0}、π₁=P{1} とおく。左の区間では、

H−Kq = ∫₀ᵘ fₚ(s) ds (0<u<a)

その零点は u≤π₀ に限られる。q は (0,π₀) で定数なので、dq が載れるのは初期の一定区間の末尾 u=π₀ だけ。同様に右側では、

H−Kq = ∫ᵤ¹ [1−fₚ(s)] ds (b<u<1)

dq が載れるのは u=1−π₁ だけ。よって分位関数の跳びは高々二つで、支持は {0,c,1} に含まれる。π₀ または π₁ が0なら二点以下になるため、非二点の場合には両方とも正である。

十分性

二点分布では dq は一点 p∈[a,b] に集中し、そこで Kq(p)=√[vp(1−p)]=H(p)。したがって等号。

{0,c,1} 型では、定理 B の質量公式から p₀≤a、1−p₁≥b が従う。二つの跳躍点ではそれぞれ左と右の支持境界による上界が等号になる。したがって積分は0。端の質量が0の退化例も含めて、定理 B が成立する。

二つの帰結 — 中心の誤差保証と一般区間への変換

最適に近い候補は、中心にも近い

全入力に対する最悪二乗誤差が R²+ε 以下の候補 Q なら、証明2の下界から W₂(Q,C)≤√ε。有限個の入力で誤差が小さいと確認するだけでは、この保証は出ない。

[A,B] 上の問題

平均 m、分散 σ² なら、μ=(m−A)/(B−A)、v=σ²/(B−A)² で正規化し、得た中心を x↦A+(B−A)x で戻せばよい。

R² = σ² log(((m−A)(B−m))/σ²)2 + log(((m−A)(B−m))/σ²)

ここでは A<B、A<m<B、0<σ²<(m−A)(B−m)。元の問題の距離には区間長 B−A が掛かる。

05 / WHAT WAS ALREADY KNOWN

出典をたどると、1973年につながった。

証明を作れたことと、新しい定理を発見したことは別だ。調査すると、答えを作る重要な部品は、保険数学や最適実験計画の中にすでにあった。

中心の元になる補助分布 S は、Stoyan (1973) の定理3に一致する。公開原文の印刷155ページを確認し、両端の点質量・連続部分・その間の空隙まで照合した。[1] 対数を含むその分散公式も、Hürlimann (1996) の式(2.4)に載っている。[2]

何を照合したか先行研究現時点の位置づけ
補助分布 S の形Stoyan (1973), Theorem 3
Hürlimann (1996), Table 3
既知と確認
今回の導出は再発見。新分布とは主張しない。
S の対数分散公式Hürlimann (1996), Lemma 2.1, Eq. (2.4)既知と確認
尺度・記号を戻すと同じ式になる。
二点分位族の指数核と、両端原子+一様密度の重みBrownian bridge / OU の既知表現、最適実験計画、区間の magnitude既知の構造
座標変換や重み自体を新規性の根拠にしない。
S を最適に縮めると、全固定モーメント族の唯一の W₂ 中心になること近接する中心・リスク最適化研究と照合同一結果は未確認
新しい応用・系の候補。新規性の認定ではない。
球面に到達する全入力の必要十分条件二点・三点分布を用いる古典的結果と比較同じ分類は未確認
三点構造そのものには先行例がある。
既知の分布 S と、今回の中心 C の正確な関係

補助分布 S を次の分位関数で書く。

fS = μ−H′, V = Var(S) = v[1 + ½ log(M/v)]

Stoyan の記号を m=μ、σ²=v、上限 b=1 と置くと定理3の分布に一致する。Hürlimann の相対分散は ν=v/μ²、その比 νᵣ は v/M。式(2.4)を元の尺度へ戻すと、上の V になる。[1][2]

Y が S に従うとき、今回の中心 C は平均の周りで係数 v/V=κ だけ縮めた分布である。

C = Law(μ + (v/V)(Y−μ)), Y∼S
Var(C) = κv < v < v/κ = Var(S)

S は全入力を凸順序で上から押さえる分布で、入力族そのものには属さない。平均が等しいとき、凸順序 P≼cxS とは、すべての凸関数 φ について Eₚφ(X)≤Eφ(Y) となること。ここから得られる共分散の下界を使うと、縮小係数 t≥0 に対する W₂ 誤差の上界は v+t²V−2tv。この二次式の最小化が κ を与える。

この計算は上界を与える。任意の代表 Q に対する最適性は、証明2の分位重心による下界で初めて確定する。

なぜ対数が現れる? — 二点分布と指数核

二点入力の中心化分位関数どうしの内積を計算すると、

⟨qp,qr⟩ = v exp(−½ |logit(p)−logit(r)|)

logit(p)=log(p/(1−p))。y=½logit(p) に座標を変えると、長さ L の区間上の指数核 v exp(−|y−y′|) になる。証明2の重みも、

y = ½ logit(p), νy = δy(a) + dy + δy(b)L+2

となる。これは区間の両端に原子を置き、その間に一様な密度を置く既知の平衡測度を正規化したもの。指数相関を持つ最適実験計画と、区間の magnitude に同じ式が現れる。[3][4]

二点分位族の内積を v で割った核は、標準化 Brownian bridge を logit 時間で表した OU 過程の共分散とも一致する。[5] 今回の対数は、二点入力族をこの座標で測った区間の長さとして理解できる。

公開時の結論:新規性は、まだ未確定。

今回確認した一次資料では、明示中心の最適縮小と最遠入力の完全分類を同じ形では確認できなかった。ただし、これを「世界初」とは言えない。別表現の既知結果や、本文未確認の文献が残っている。

追加調査で解消した点と、残った具体的な確認先

今回、詰められたこと

以前は Hürlimann の追記による間接的な帰属だった Stoyan (1973) について、ハンガリー科学アカデミー図書館の公開原文7ページを確認した。補助分布は定理3に直接帰属できる。同論文は凸関数期待値の上下界を扱い、W₂ 最小包含球や今回の縮小中心は述べていない。§3・158ページには {0,x,b} 型の三点分布も現れるため、この形自体も発明とは扱わない。[1]

近い研究との違い

  • Wang ほか (ICML 2025) は Wasserstein 球中心そのものを扱うが、入力は有限個の分布。固定支持の定式化に加え、付録Iには自由支持の反復法もある。今回の無限のモーメント族の明示式は、閲覧箇所では未確認。[6]
  • Pass は最小包含球と分散最大化の双対性の一般論。今回のクラス固有の計算とは分けて扱う。[7]
  • Bernard–Pesenti–Vanduffel は、指定された W₂ 球とモーメント制約の下でリスク尺度を最適化する。球の中心自体を選ぶ今回の問題とは設定が異なる。[8]

本文を確認できていないもの

  • Chen–Hu–Liu–Wang, Range Value-at-Risk under Distributional Ambiguity: Tight Bounds with Support Information。著者の研究一覧と大学の業績ページを追加確認したが、公開後続版は見つからなかった。本文未読のため、一致・不一致を判定しない。[9]
  • Wang Ruiqin (2024) の関連学位論文も特定したが、大学リポジトリが認証を求めるため本文未読。[10]
  • 指数核の古い出典 Boltze–Näther (1982)、Chebyshev 中心に関連する Montiel (2012) の学位論文、網羅的な被引用追跡も残る。

検索には Wasserstein / Mallows / Chebyshev center / minimum enclosing ball と、fixed mean・variance・bounded support・convex order・stop-loss・integrated quantile・exponential kernel などを組み合わせた。公開本文の関連節と引用文献を照合した範囲での評価であり、数学文献全体の網羅検索ではない。

06 / VERIFICATION & REFERENCES

証明と、計算による点検を分けて残す。

任意の確率分布に対する根拠は、上に示した解析的証明。その実装ミスや境界の見落としを探すために、有限の分布で計算も点検した。

検査結果
有理数で作った入力格子上の全12,870分布+固定seedの2,000分布。計14,870分布が検査を通過。
包絡・モーメント51,791切点を有理数演算で確認。
等号分類非退化の等号644分布、厳密な不等号13,922分布。別に退化304分布。
独立した数値積分32分布の距離・中心モーメントと、12パラメータ組の分位重心を確認。
極端なパラメータ退化に近い6組で係数・半径の符号と範囲を確認。直接積分の検査ではない。

14,870分布は、それぞれ自身の平均・分散に対応する中心で点検した。同じ一つの固定モーメント族から14,870個を取ったわけではない。解析的導出と独立担当による監査はAIで行っており、形式証明器による検証・専門家の査読は未実施。

再実行方法と計算精度

上のコードと結果はこのHTMLに埋め込んである。Python 3.11以降と SciPy のある環境で、保存したコードを python3 verify_variance.py で実行する。結果JSONは同じフォルダに出力される。

格子は支持点0,1/8,…,1、確率の分母8。乱数seedは 20260907、支持点 i/37 から1〜8点、1〜31の整数重みを正規化した。包絡の平方根比較は非負性を確かめて二乗し、Fraction で厳密に判定する。

対数・平方根を含む距離は Decimal の60桁演算、絶対許容差10⁻⁵²。独立した SciPy 積分との比較許容差は2×10⁻¹¹。全計算が有理数だけで完結するという意味ではなく、有限検査は一般定理の証明の代わりにはならない。

何に使えて、何が次に残るか。

範囲・平均・分散だけで代表分布を一つ選ぶとき、W₂ に関する最悪誤差の基準になる。ただし、標本から平均と分散を推定した場合の統計的保証は、この定理だけでは得られない。

次に考えたいのは、分散が厳密値でなく区間で分かる場合、対称性などを追加した場合、そして「ほとんど最遠」の入力が等号族にどれだけ近いか。これらの一般解は、本ノートでは主張していない。

小さな証明を作り、出典をたどり、既知の部分を明らかにする。このノートは、その途中経過を検証できる形で残すためのものです。

照合した一次資料・残る確認先

  1. D. Stoyan (1973). Bounds for the extrema of the expected value of a convex function of independent random variables. Studia Scientiarum Mathematicarum Hungarica 8, 153–159. 所蔵ページ · 定理3の原文全7ページ確認。Theorem 3:印刷155頁(全巻PDF161頁)。§3:158頁。リンク先の全巻PDFは約168 MB。
  2. Werner Hürlimann (1996). Improved Analytical Bounds for Some Risk Quantities. ASTIN Bulletin 26(2), 185–199. 公開本文 · DOITable 3・Lemma 2.1, Eq. (2.4):188頁。追記:198頁。分布と分散公式を記号変換して照合。
  3. A. Zhigljavsky, H. Dette, A. Pepelyshev (2010). A New Approach to Optimal Design for Linear Models With Correlated Observations. JASA 105(491), 1093–1103. 著者原稿§3.1・Theorem 3(著者原稿PDF11頁)。指数相関の端点原子+一様密度。
  4. Tom Leinster (2013). The Magnitude of Metric Spaces. Documenta Mathematica 18, 857–905. 出版本文Theorem 3.2.2 と直後の区間の weight measure。同じ測度は Willerton, Theorem 2 にも記載。
  5. M. Barczy, P. Kern. Gauss-Markov processes as space-time scaled stationary Ornstein-Uhlenbeck processes. 確認版(2019)Introduction・本文1–2頁。標準化 Brownian bridge と logit 時間の OU 過程の対応。
  6. Yuntao Wang, Yuxuan Li, Qingyuan Yang, Hu Ding (2025). Finding Wasserstein Ball Center: Efficient Algorithm and The Applications in Fairness. ICML, PMLR 267, 63490–63515. 論文ページEq. (2)、§§1–3、付録I。有限個の入力に対する中心と計算法。
  7. Brendan Pass. Generalized barycenters and variance maximization on metric spaces. 2020 preprint / 2023 publication. 確認本文 · DOIProposition 4、Theorem 5、Corollary 6。最小包含球と分散最大化の一般論。
  8. Carole Bernard, Silvana M. Pesenti, Steven Vanduffel (2024). Robust Distortion Risk Measures. Mathematical Finance 34(3), 774–818. 著者版Corollary 3, Eq. (11)、Corollary 5、Appendix B.2。指定した W₂ 球・モーメント制約でのリスク最適化。
  9. Zhi Chen, Zhenyu Hu, Guangwu Liu, Ruiqin Wang (2023). Range Value-at-Risk under Distributional Ambiguity: Tight Bounds with Support Information. SSRN 4605392本文未確認。追加確認先:Chenの研究一覧Huの研究一覧NUS業績一覧
  10. Wang Ruiqin (2024). NUS学位論文。大学リポジトリ概要の第三部に range VaR の境界への言及。本文は認証が必要で未確認。Chen ほかの論文との本文対応も未照合。

文献確認日:2026年9月6日。新たな先行例が見つかった場合は、帰属と新規性の評価を更新する。