SCP風創作

あえて本家とは異なる形式にしております。

オブジェクトID: D-001

概要

D-001はXX県にて20XX/XX/XXに観測された小規模な情報操作を発端とする一連の超常現象を引き起こしたと考えられている人物です。 一部の例外を除き、D-001には現存する世界中のあらゆる出来事・記述・データ・信号・情報を矛盾なく整合性を保ったまま 改ざんする能力が備わっており、それは無自覚に行使されていました。 極めて危険な能力を有していますが、現在は[積極的に干渉しない限りは安全である]という評価状態です。

発覚の経緯

ヒトの認知能力または時空を操作することが可能な敵対的Cクラスオブジェクトへの対抗手段として、 本組織は任意のデータを「凍結」させる技術「アカシックストレージ」を19XXに実用化し、 20XX/XX/XX以降、全世界2,940地点のネットワークトラフィックハッシュ値を600秒に1回の頻度で追記し続けています。 一度「凍結」されたデータはいかなる物理現象をもってしても破壊・変更・削除することが原理的に不可能であることが A.Einstein (Jan, 2000) によって証明されています。 アカシックストレージは任意のデータ形式を扱うことができますが、 入出力スループットは200B/secが理論上の最大値となっており非常に低速であるため、 動画や音声を記録することは難しく、ストリーム形式の記録は専らSpeech to Textによってなされます。

20XX/XX/XX 10:05(UTC+9)頃、XX県のネットワークノードで小規模なデータ改ざん現象を検知し、

176名からなる対Cクラスオブジェクト特殊偵察部隊が現地へ派遣されました。 3年以上の長期に渡る周辺地域の調査・監視により、以下のことが判明しました。

  • XX県XXX市XXに住む20歳の女性に関する自治体戸籍データが徐々に改ざんされていることをN分探索法により18カ月掛けて特定。
  • 当該女性そのものが超常現象の発生源となっていることをオペレーションZX1により確認。隊員X名が消失した可能性。
  • 認知能力に影響を与えるのではなく、出来事や情報そのものが改ざんされていることを確認。
  • ある程度時空を操作する能力を有している可能性がある。
  • 当該女性は自身の能力に無自覚である。外部からの干渉によって能力を自覚した場合はCクラス災害の発生が予想される。

本組織はDクラスオブジェクトとして当該女性を分類し、D-001のシリアルコードを与えました。

記録: オペレーションZX1

指揮官: [Classified]

目的: D-001の確保

結果: D-001の能力の特定 隊員の消失 組織職員1名の存在消失疑惑

確保には至らず。作戦に参加した"と思われる"隊員X名の存在そのものが消されていることが判明。

3年間の監視及び作戦失敗による損害を鑑み、積極的な干渉を試みない限りは無害であると評価。 ただし、「凍結」ストレージには既にオペレーションZX1の報告書が15,498レコード分存在し、 ストレージ上で最も「古い」レコードには成功と記されている。

また、プロジェクトリーダークラスの職員1名の存在が消されている可能性も浮上しており、調査が開始された。


...

記録: オペレーションZX1

指揮官: [Classified]

目的: D-001の確保

結果: D-001の能力の特定

確保には至らず。ただし、「凍結」ストレージには既にオペレーションZX1の報告書が2レコード分存在し、

ストレージ上で最も「古い」レコードには成功と記されている。

記録: オペレーションZX1

指揮官: [Classified]

目的: D-001の確保

結果: D-001の能力の特定

奇襲作戦実行直前にD-001が失踪。追跡を続行する。

ただし、「凍結」ストレージには既にオペレーションZX1の報告書が存在していることが発覚した。

記録: オペレーションZX1

指揮官: [Classified]

目的: D-001の確保

結果: 成功

奇襲収容作戦は成功し、D-001をコンテナブロックM-0XXへ収容した。

20XX/XX/XX 01:00 亜酸化窒素ガスを通風孔より注入

01:30 D-001がノンレム睡眠状態となっていることを確認し、輸送車両へ移動。

02:30 コンテナブロックM-0XXへD-001を収容

09:30 D-001が目を覚ます

以下、Dr.KとD-001の対話内容を記す


Record start.

K: 「おはようございます。[[D-001の本名]]さん。混乱していることでしょう。まずは状況を説明したいと思います。」

D-001: 「・・・ここはどこなのよ」

K: 「申し訳ございません。それにはお答えすることができません。」

D-001: 「そう。じゃあ質問を変えるわ。あなたは誰?何者?」

K: 「冗談のように聞こえるかもしれません。私は世界の危機を救うために結成された国際組織の一員です。」

D-001: 「本当に冗談のような話ね。」

K: 「私たちの組織は世界にとって脅威となる【何か】を探し出し、安全を確保することです。」

D-001: 「ふぅん・・・。で、その脅威となる【何か】が私だと言いたいの?」

K: 「大変申し上げにくいのですが、私たちの推測ではそうです。そのため、このような手荒な方法で安全を確保することになってしまいました。」

D-001: 「安全の確保・・・ね。私が何か悪いことをしたとでもいうの?」

K: 「いいえ、今のところは、まだ。」

D-001: 「?」

K: 「あなたにはある特殊な能力があります。」

D-001: 「バカバカしい話だけど、こんな大掛かりな鉄の壁で囲まれた部屋を用意できるぐらいにはそれを本気で信じているようね。」

K: 「その通りです。信じるというよりも、これまでの調査と観測された事象からそう考えざるを得なかった、といった方がより正確です。」

D-001: 「例えば?全く話が見えてこないわ。」

K: 「そうですね・・・。あなたがXX高校へ進学した理由を覚えていますか?」

D-001: 「・・・。」

K: 「あなたの学力レベルと不釣り合いな場であったといえると思います。」

D-001: 「あの頃は考え方がまだ子供だったのよ。あまり知られたくない黒歴史があるわ。」

K: 「そのようですね。その当時のあなたの【課外活動】について、あらゆる公的な記録が消去されていることが判明しています。」

D-001: 「え?」

K: 「今となっては私たちにもその内容はわかりません。」

K: 「ですが、あなたにとって消したい過去は、人々の記憶からも、全ての痕跡が消されているのです。」

D-001: 「そんな話が信じられると思う?第一、こんなところに閉じ込められていたら確かめようが無いじゃない!」

K: 「それだけではありません。」

K: 「あなたは、家族が亡くなるリアルな夢を見たことはありませんか?」

D-001: 「そんな夢、誰でも見たことあるでしょう。」

K: 「その【家族】は、あなたのご両親だったのではありませんか?」

D-001: 「・・・具体的ね。当たりよ。」

K: 「3年程前に見た夢であるのにもかかわらず、その後親戚に引き取られるまでのストーリーを、今でも鮮明に覚えているのではありませんか?」

D-001: 「・・・ッ!?・・・あなたは一体・・・!?」

K: 「私たちは膨大な観測データから、あなたの周囲で起こったであろう超常現象を推理しました。」

K: 「そして、たった今のあなたの反応から、私たちの予想は確信に変わりました。」

D-001: 「・・・何を言っているのか全く分からないわ・・・」

K: 「心中お察しします。ひどく混乱なされていることでしょう。」

D-001: 「・・・」

K: 「これからあなたにお伝えすることは、私の独断による一種の【賭け】です。」

D-001: 「・・・」

Agt: 「シナリオパターンに無い行為は慎んで下さい。」

K: 「恐らくあなたには、時空を操作する能力も備わっています。」

Agt: 「正気ですか!もう後には引けませんよ。」

K: 「一度起こった出来事に対して、時間を巻き戻すことによって【修正】を加えることができるのです。」

D-001: 「・・・」

K: 「そしてその能力は無意識の内に発動し、巻き戻された時間の分だけ記憶を失くしてしまう。」

K: 「しかし修正された過去は何らかの形で、あなた自身の場合はリアルな夢という形で残ってしまうようです。」

K: 「推測に推測を重ねた結論として、3年前、あなたの家庭に何か不幸なことが起こったのではないかと私は考えています。」

D-001: 「・・・薄々と感じてはいたわ。」

D-001: 「あの頃、何度も同じような夢を見たの。何度も助けようとして、結果はいつも同じで・・・。」

D-001: 「いつの間にか夢と現実が入れ替わっていたのね。」

D-001: 「でも、高校での部活動は私にとってかけがえのない思い出なのよ。」

K: 「あなたが望めば、その思い出を現実世界に呼び戻すことも可能なのですよ。」

D-001: 「・・・」

K: 「私たちがあなたをここへ連れてきた理由は、もう一つあります。」

End Of Record


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created at : 2020-02-06 12:45:18
updated at : 2020-02-07 12:59:26
author : Toshiaki Yokoda