BCG仮説まとめ
既に3月から「BCGがCOVID-19の被害を抑えているのではないか?」という仮説が注目されているが、いったんまとめておく。
要点
以下は最低限把握しておきたい。
- BCG接種ポリシー及び結核蔓延度とCOVID-19死亡率に明確な相関関係が認められている。
- BCG仮説は後ろ向き研究であるため因果関係を求めることは難しいが、BCG以外の要因を取り除いた比較をしても依然として強い相関関係が残るため、実質的にはほぼ因果関係があるものと考えられる。
- 人種、高齢化率、医療水準、対近縁ウイルス予防接種ポリシー等のあらゆる要素の差を取り除いた地域別差異に着目しても、BCG接種ポリシーとの相関関係が強く残る。
- 結核菌由来のなんらかの物質(アジュバント)が自然免疫をエピジェネティックに強化する可能性(訓練免疫)については2018年のcell掲載論文によって既に広く周知されていた。
- 「菌とウイルスの違い」は全く関係のない話であり、「特定の病原に特異的に働く」獲得免疫について論じているのでもない。
カウンターエビデンスについて
BCG仮説が注目されてからカウンターエビデンスをチェックしているが、有効なものはほとんど無いといってよい。
ダイヤモンドプリンセス号で日本人が多く感染・死亡したことがカウンターエビデンスとして論文になっていたが、そもそも乗客の国籍と年齢に非常に大きな偏りが見られるためクオリティに問題がある。
最近話題になったイスラエルの未査読論文については、そもそも「検査陽性率」を比較しており、さらに致命的なデータの誤りと出典未記載項目が多数見つかっている。また、対照群の数も人数も少なく、仮にデータの誤りが無かったとしてもBCG仮説を覆すには程遠い。
個人的に現段階で最も有望なカウンターエビデンスとして認識しているものは、ブラジルの死亡者数急増である。
ブラジルは後期分与株のBCGを接種している国ではあるが、ロックダウンやクラスター対策などの防疫対策を完全無視しており、5月上旬頃から死亡者数の急増が見られるようになっている。
ただしこれにも注意が必要で、日経が公開している感染者マップを見ればわかるが、欧米ほど急なペースで死亡者数が増加しているわけではない(統計を信用できるかという問題はあるが)。上昇率の推移を見なければ最終的な結論(ブラジル株のBCGは有効なのか?という問い)を出すことは難しいだろう。
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updated at : 2020-05-20 11:54:30
author : Toshiaki Yokoda