【随筆】前職

前職は心の負傷により退職した。

たぶん平均的な人間であれば「なぜこんな事で!?」というレベルの負傷なのだが、私には重傷だったのだ。

遺伝的・先天的な要因が80%以上を占める事なので詳細は省く。あまり当時の異常な精神状態は思い出したくないし。

前の会社の名誉のために一言述べておくが、会社は悪くないし、周りの同僚・上司・部下はみんな最善を尽くすいい人だった。 客観的にみても、私だけがダメな人間だったと思う。

さて、「心の負傷」とはいっても所詮は脳内の化学物質のバランスでどうにでもなるレベルの異常であったため、服薬を中心とした治療によって1年程度で劇的に精神状態が改善された。

というのも、この病気の症状や治療の経過をインターネット上で調べると「無気力になる」「なかなか治らない」といったものが多く、それらレポートに比べれば私のケースはかなり良い方だと感じる。

ちなみに私の症状はこんな感じだった。

  • 「何かしなくては」と焦燥感が続く。
  • 眠れない。
  • 思考がまとまらない。なにも考えられなくなる。
  • 人との会話が困難になる。
  • 決断ができなくなる。
  • 将来についてとても悲観的になる。

今となってはかなり笑える反応なのだが、これがいわゆる急性期というもの。 一般的によく言われる「無気力になる」というのは後の話であり、急性期は強い焦燥感と不眠が現れるようだ。

当然「休暇を貰った途端に元気になって遊びに出かける」ようなものではない。

服薬開始から一カ月ほどはほとんど思考がストップしているような感覚で、それゆえに焦燥感が緩和されるような形だった。

精神科で薬を処方されてから2週間程が経過した頃、思い切って休職することにした。

その後2カ月間ほどは深い微睡みの中で生活していたような気がする。全く記憶がはっきりしない。

といった具合に休職可能期間の上限6カ月が過ぎ、退職となった。

一応、精神科を受診すると決めた時に「自分が突然居なくなっても業務が続けられるように」ある程度は身辺整理しておいたのだが、それでも近しいメンバーには多少なりとも迷惑をかけたことだろう。

退職後は傷病手当金、失業手当、再就職手当をフルに活用して生活を続けた。

傷病手当金(18カ月) -> 失業手当(1年以内に就職) -> 再就職手当 -> 就業促進定着手当

この強かな流れも精神科を受診した後に徹底的に調べ上げておいたものだ。子供が二人居るし、妻は定職に就いているわけでもなく、その上お金に無頓着なので、この辺りは私の方が徹底して調べた。

私の場合は失業手当受給可能期間が1年あったので、2カ月ほど職を探して就職、残りの日数に応じた再就職手当が支給された。

かなりの額だった、とだけ言っておこう。

再就職先、つまり今の職場はもちろん前職よりもかなり給与は落ちてしまうが、私が求めていた「ごく普通」の良識的な社風だったので満足度は非常に高い。

と、ここまでの内容は既にこのサイトで断片的に書き綴っているような気がする。

随筆って難しいね。


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created at : 2020-08-17 13:19:19
updated at : 2020-08-17 14:50:09
author : Toshiaki Yokoda